日本の労働生産性は低く、経済成長を生み出すためには、
『生産性向上が必要』とよく言われます。
ニュースでも新聞記事でも、同じような話を良く聞きますが、
はたして日本の労働生産性は本当に低いのでしょうか?
私が新卒入社した頃にPCが普及し始めました。
所属していたグループには30人程度のメンバーがいましたが、
PCはグループ共通で3台という状況でした。
もちろん、ビジネス文書も技術資料も全て手書きでした。
筆記具はボールペンが主体で、図形を描く場合はテンプレートを使用し、
修正の手段は砂消しゴムや修正液。
同じような文書・資料を作成する場合は、原紙をコピーし異なる部分を修正
もしくは、一から作り直しという時代です。
当時の生産性は非常に低かったと思います。
日本の生産性について
『日本の労働生産性は本当に低いのでしょうか?』
通勤途中に聴いているFM NACK5で、
慶応義塾ビジネススクール准教授 小幡 績氏が話していた
『製品・サービスに見合った適正な価格を取りっぱぐれているから、
生産性が計算上低くなっているにすぎない』
という趣旨の発言が妙に頭に残りました。
上記を踏まえて生産性について調べてみると
【生産性とは、 労働・設備・原材料などの投入量と、
これによって作り出される生産物の産出量の比率のこと。】
とあります。
生産性は
「アウトプット(産出量)をインプット(投入量)で割った」式で算出します。
ここで言うインプットとは、アウトプットを得るために使った費用で、
例えば材料費や人件費のことです。
アウトプットとは、販売ですから、製品の価格そのものです。
材料費や人件費等インプットが増えたのに、
アウトプット(価格)が一定なら、当然生産性は下がります。
最近、【ミツカンの味ぽん】が33年ぶりに値上げするという記事が話題となりました。
33年もの間、インプット(材料、人件費等)が変わらないことはないので、
生産性は下がり続けていた可能性が高いと思います。
購買力の国際間比較で良く使用される英エコノミスト誌の
「ビッグマック指数」でも日本のランキングは53カ国・地域中41位です。
1位スイスの925円に対して、日本は382円です。
アジアの発展途上国ベトナム(406円)よりも低い状況には愕然としました。
給与があがらず、物の価格を上げられないという側面は否めないものの、
1個のビッグマックを作る作業時間はどこの国でも同じはず。
作業時間が同じでも、人件費や材料費等のインプットが日本の2.4倍未満であれば、
スイスに比べて日本の生産性は低いという計算結果になってしまいます。
発想の転換が必要
私が働いている業界でも、昨年から値上げラッシュが続いています。
納期遅れで関係先やユーザーに迷惑をかけているにも関わらず値上げするというのは、
30数年この業界にいる中で初めての経験です。
海外メーカーは、製品の製造コストや需給バランスの変化で価格を柔軟に変更します。
まぁ、価格が安くなることはほぼありませんが…。
今回も従来1個4,000円程度の半導体が、10万円以上になったという事案を聞きました。
インプットが25倍になっている訳はないので、
半導体メーカの生産性は、大幅にあがっていることになります。
片や日本では、インプット上昇分に見合った価格改定を行うケースはほとんどありません。
爪に火を灯すような生産性を高める努力をする前に、
製品、サービスを適正な価格で販売する方向に転換した方が、
多くの人が幸せになれると思うのは私だけでしょうか。
ですが、デフレになれすぎた今の日本人に
「値上げ」という価格改定は受け入れがたいとも思います。
日本人は国に対策を訴えるだけでなく、
デフレが続くことの将来的な問題と、
賃金と物価の関係性を個々に意識し、少しでも理解する必要があると思います。